中学とはちがう高校数学の勉強法

高校数学の“難しさ”

まずは内容の多さです。中学の内容を100とすれば、高校の内容は少なく見積もっても500~1000くらいになります。この“~”というのがポイントです。教科書のページ数から考慮すると3倍くらいになりますが(数Ⅰ,数Ⅱ,数Ⅲ,数A,数Bの合計)、その『深さ』は10倍以上になると思います。

例えば、数Ⅰ教科書の有理数という分野(1ページ分)は、これだけで教科書1冊分くらいの本ができてしまいます。どういうことかというと、「有理数は、①整数②有限小数③循環する無限小数 からなる」ものですが…

なぜ、分数は循環するのでしょうか?

循環しない分数は存在しないのでしょうか? 例えば、「1/7 は循環しますか? それとも循環しませんか?」 このように考えると意外と難しいですよね。この部分が大学の推薦入試(の口頭試問)で出される可能性もあります。興味のある人は証明してみてください。つまり、たった1ページの内容も、根本的な疑問を掘り下げていくと意外と難しい問題に辿り着いてしまうのです。難関大学の入試では、その「見えない根本原理」が問われることも多いのです。

  • 1/7が循環小数になる理由

 

数学は「暗記」か「理解」か?

この前提をふまえると、数学は、「暗記(記憶領域)」も「理解」もどちらも必要になることがわかると思います。つまり、理解をしてから覚える(記憶領域に定着する)まで習熟するのです。ただし、『理解をしただけ』では、テストや受験には対応できません。なぜだと思いますか? 

「少し考えてみてください」

 

その理由はテストには制限時間があるからです。制限時間がないのならば公式をその場で導き、その場で解法を試行錯誤し、正しい解答に辿り着くことは可能です。しかし限られた時間の中で、このようなことを試すのはナンセンスですよね。ある程度は身体が反応する(頭ではなく)ように解けなければいけないということです。

 

数学としての“理解”とは?

問題1 次の数字10個を15秒でおぼえてください。

11,46,4,7,1,22,1,37,2,29 

 

『なぜ、覚えられないのですか?』

 

問題2 次の数字10個を15秒でおぼえてください。

1,2,4,7,11,16,22,29,37,46

 

『覚えられた人もいますよね? なぜ覚えられるのですか?』

 

規則性・法則性など、なんらかの理由があれば覚えられるものです。この根拠や理由を、自分なりに考えてみるというのがポイントです。

高校数学で“理解する”とは、他者または自分自身に“説明できる”状態を指します。だから、数学の応用問題は、他者に説明するように解いてください。計算問題は、簡潔な答案で構いませんが、「数学=計算」ではないですからね!だから、『なぜ?』という素朴な疑問を大切にしながら問題に向かってください! これが、数学ができる秘訣だと思います。では、問題を“理解する”とは具体的にどういうことか? 次のような問題がありました。

 

問題3 100m走をすると、AはBに10mの差をつけて勝ち、BはCに8mの差をつけて勝つ。AとCが100m走をすると、AはCに何mの差をつけて勝つか答えよ。

 

解答1) 「ある問題集の解答をそのまま掲載しました。」

A:B:C=1000:900:828より 

100-82.8=17.2   答 17.2

 

解答2) 解答1で理解できる人もいるかもしれませんが、たいていの人は、これではわかりません。ではどうするか?

「誰かに説明するように解いていく」ということを意識してください。

 

数学は積み重ねの学問である

そうはいっても、数学が嫌いな人はたくさんいますよね。苦手な人ではなく嫌いな人です。なぜ、数学は敬遠されるのでしょうか? 考えられる答えを列挙してみました。

  • センスが問われる。努力が実らない。
  • 暗記が通用しない。つまずくと挽回不能である。
  • 実用性に乏しい。(実際はそんなことないですが…)

こんなところでしょうか。センスが問われるのは否定できません。ただ、スポーツだって、芸術だって、物書きだって同じですよね…。重要なのは2点目です。つまずくと挽回するのが難しい。その理由は、数学が“積み重ね学習”になっているからです。

例えば、「2次方程式」がわからない場合、2次方程式が理解できないのではなく、2次方程式以外でつまずいている可能性があります。断定はできませんが、中3の内容でつまずいたら、場合によっては小6の内容に戻らなければいけないのです。本人に自覚できないところが難しいのですが…。

忘却曲線について

ドイツの心理学者であるエビングハウス(1850~1909)は人間の学習とその定着度を測る実験を行い、以下のような結論を得ました。一般的に、(どのように学習しても)1日経てば、およそ7割の内容を忘れてしまうのです。記憶力の多寡によるわけではありません。

予習の効能

だからこそ、『人間は忘れる』ということを前提に学習を進めるべきなのです。何の準備もなしに授業にのぞめば、すべてが初見になってしまいます。人間の脳は、初見の情報を忘れるようにプログラムされています。生命情報に関わらないのですから当然です。だから、予め(あらかじめ)自分で学習を進め、「何がわかって」「何がわからなかった」か、自覚的になっておくと記憶の定着が飛躍的に向上します。つまり、「予習をしよう」ということです。急がば回れ。皆さんが忙しいのはよくわかっています。休み時間の5分だけでもいいので、その時間を有効活用してください。