元面接官が考える都立高校「推薦入試」面接対策

都立推薦入試の概要

  • 合否の判定は、①調査書(+自己PRカード),②個人面接,③小論文,(④集団討論:実施する場合のみ)を総合した成績で合否判定される
  • 集団討論を実施する学校もあり、昨年度は普通科10校で実施された(日比谷,西,北園,竹早,調布南,東大和南,篠崎,鷺宮,深沢,永山)
  • 推薦入試で合格する生徒の割合:全定員の20%
  • 都立推薦入試の倍率:例年2~3倍の高倍率

①調査書別の記事を参照

②個人面接(+自己PRカード)

個人面接で問われる重要ポイントは以下の4点です。

  1. 志望動機
  2. 中学校で頑張ったこと
  3. 高校でやりたいこと
  4. 志望校の特色(他校とのちがい)の理解

問題1「なぜ、この4点が重要だと思いますか?あなた自身が面接官になったつもりで考えてみてください。」

この4点はどの学校でも(面接で)聞かれる質問です。高倍率になればなるほど重要度が増すポイントですが、「なぜ重要か?」を問われると答えられない人は多いのではないでしょうか。その理由は「学校側が推薦で合格させたい人がイメージできていない」のかもしれません。もちろん、中学生でここまで考えている人は少ないのですが、「推薦で受かる人の差」がはっきりわかる分岐点になるのでよく考えてほしいと思っています。

問題2「あなたが面接官だった場合、推薦でどのような人に入学してもらいたいですか?」

いろんな意見があると思いますが、学校側が(推薦で)入ってほしい人は『(中学校で)成長したと明確にわかる人』です。誰でも成長はしますよね。しかし、その成長が誰の目から見ても明らかな人は「どのような人であり」「どこで判断すればよいでしょうか?」 皆さんが仮に面接官だった場合も、それを判断するにはその人の「過去」「現在」「未来」を細かく聞いていくはずです。ここで、問題1(なぜ4点が重要か)に戻ります。受験生の現在=「志望動機」であり、過去=「中学校で頑張ったこと」、未来=「高校でやりたいこと」なのです。だから大学の推薦入試でも就職面接でもこれらの質問は必ずと言っていいほど聞かれます。

また、「志望校の特色(他校とのちがい)の理解」も重要です。これも面接官の気持ちになって考えてください。推薦入試を受けるということは、どうしても入学したい理由があるはずです。「なぜ、数ある学校からうちの高校を選んだのか?」気になりますよね。A高校でもなく、Bでもなく、〇〇高校を選んだのです。だとしたら(本当に考えているなら)、他校とのちがいをはっきりと理解しているはずです。〇〇高校にしかない特色があり、それにひかれて推薦を受けたはずですね。合格する人は必ずこの『他校との違い』を明確に説明することができています。つまり説得力がある(=論理的思考力がある)のです。たくさんでなくてもよいので、1つのことを深く掘り下げてください。では、(中学校で)成長したと明確にわかる人を「どこで判断できるでしょうか?」

推薦入試面接で必ず聞かれること

  • 「中学校で頑張ったこと」=過去
  • 「志望動機」=現在
  • 「高校でやりたいこと」=未来
  • 「志望校の特色(他校とのちがい)の理解」=志望動機の明確さのチェック

例3.あなたが面接官だとして、下の発言から「A君は確かに中学時代に成長したな」という説得力を感じるでしょうか?「感じる/感じない」に関わらず、その理由も併せて答えてください。

  • 受験生A(回答例)…「私は中学時代にバスケ部で部長を務め、委員会では3年生で生徒会副会長も務め、クラスメイトからも頼られる存在でした」

部長と生徒会副会長も務めたのだから「説得力を感じる」という人もいるかもしれません。しかし、面接官の立場からいうとアピールできていないことになります。なぜなら事実や結果を伝えているだけで、そこから得られる「気づき」「解釈」がまったくないからです。説得力とは意見と理由(または主張と根拠)のつながりの力強さです。A君の発言は「クラスメイトから頼られた」という個人的な意見を伝えていますが、その「理由」がどこにもありません。だから説得力がないと(論理的思考:低)判断されます。では、A君の発言が説得力あるものになるよう(事実や結果は変えずに)修正してみましょう。

  • 受験生A(修正案の例)…「私は中学時代にバスケ部の部長を務めました。自分からやりたいと言ったわけではありませんが、『とりあえずやってみる』という姿勢は重要であると思っています。その結果、チームがまとめっていったことは私にとってかけがえのない経験です。それ以来、クラスメイトからも頼られる存在になりました」

事実や結果だけでなく「自分なりの解釈」や「気づき」も加えています。クラスメイトから頼られる存在になった理由も伝えられています。また、複数のこと(部長、副会長の2つ)を1つに絞った部分も良い点です。なぜなら、2つ,3つのことを同時に話されると焦点がぼやけ、伝わりにくい話になってしまうからです。そのような場合は「2つあります。1つ目は〇〇でそこから□□を学びました。2つ目は〇〇でそこから…」というような方法がよいでしょう。とはいえ、ありきたりな回答という印象は残りますし、アピールできる“何か”を感じることはありません。では、どうすれば印象に残る回答になるでしょうか? そこで重要になる視点が「具体性」「オリジナリティー」「成功よりも成長」の3つのポイントです。次の(修正案2)が3つの要素を加えたものです。

個人面接で深めるべき3つの視点

  1. 具体性
  2. オリジナリティー
  3. 成功よりも成長
  • 受験生A(修正案2)…「私は中学時代にバスケ部の部長を務めました。先輩からの推薦で部長になることになったのですが、正直なことを言うと『面倒くさい』と思っていましたし、なりたいわけでもありませんでした。実際やってみると顧問の先生と部員との板挟みで自分がやりたいと思うことができるわけでもありません。辛いことの方が多く、部活が嫌になることもありました[1具体性]。しかし、自分の意見を言うことよりも人の意見を素直に聞くことができるようになったことは大きかったと思います。私なりのリーダーシップは、自分の意見を言うことではなく、人の意見をとりあえず聞いてみるという姿勢です[2オリジナリティー]。そのことに気がつけたことは『大変そうでもやってみる』という姿勢があったからだと思います[3成功よりも成長]。」

かなり印象が良くなったのではないでしょうか。ただ、ウソを言うわけにもいきません。どうすれば、このように「具体性」「オリジナリティー」「成功よりも成長」という3要素を入れられるのでしょうか。気がついた人もいると思いますが、「部長や生徒会長をやった」という事実や結果をアピールするよりも「気づき」や「(自分なりの)解釈/発見」を交えたエピソードを深めていき、面接の場で伝えた方がアピールしやすいのです。つまり、無理に「部長や大会実績、生徒会長、受賞経験」などを話す必要はないということです。もちろん「成功かつ成長」の経験であれば理想的ですが、中学時代にたくさんの成功体験をした人は少ないのではないでしょうか。つまり「成功よりも成長」を強調する理由は、葛藤を経験し自分なりに深く考えた経験があるかということを問いたいわけです。だから、まず「成功よりも成長」を感じられた出来事を1つだけ取り上げてみてください。

・「成功よりも成長」のエピソード

  • 例1)「バスケ部で3年間レギュラーに入れなかったが、〇〇という経験により□□ができるようになった(=成長)/または△△ということに気がつけた(=気づき)」
  • 例2)「小学6年のときにコロナで一斉休校になったが、〇〇という経験により□□ができるようになった(=成長)/または△△ということに気がつけた(=気づき)」

・「具体性」のあるエピソードへ掘り下げる

例1の場合、〇〇や□□に入る具体的な経験を(理由も含め)書き起こしてみてください。部活をやっている人なら誰でも試合に出たいものです。しかし、試合には出られなかったが「それでも続けてきた」という事実があるなら何かしらの葛藤を経験しているはずです。それを詳細に記述/整理していきます。

  • 例1-1)レギュラーにはなれなかったが、チームの目標を決め同級生の中で結束が強まっていく経験ができたことが何より大きい。試合で活躍することはできなかったが、日々の練習の中でチームが強くなるために自分ができることを意識して練習に参加するようになった。オフェンスで点を取ることの面白みもあるが、チームメイトをいかに守るかというディフェンスに力を入れることでチームの総合力が上がったと感じる。
  • 例1-2)レギュラーになりたかったが、ベンチで試合を観ているうちに(試合に出ている)メンバーは技術だけでなく考えてプレーしているという事実に気がついた。(メンバーの一人の)同級生は練習中もパスが来たらすぐにシュートを打ってしまう。自分勝手に打っていると感じていたが、自分の役割を自覚してプレーしていたとわかった。よく考えてみると、私は自分の役割を考えてプレーしていたとは言えない。
  • 例1-3)レギュラーになりたかったが、マネージャーとしてスコアシートを書く仕事をやっているうちに、その仕事にやりがいを感じるようになった。選手としてプレーすることも楽しいが、裏方でチームメイトを支える仕事の楽しさも理解することができた。

・「具体性」の追求がオリジナリティーの源泉

成長のエピソードを具体的に掘り下げていくと、他の人にはないオリジナリティーが自ずと出てくるものです。例1-1では「点を取る」という“光”よりも「チームメイトをいかに守るか」という“陰”に意識を向けてきたというオリジナリティーが出ています。例1-2でも、試合に出られないことのマイナスをプラスに転換し、そこから具体性のある「気づき」を得ています。事実を整理するだけでオリジナリティーは生まれません。『辛いことをどう克服したか?』という成長にフォーカスして、さらに具体性を追求してください。ここまでの話で理解してほしかった点は、材料がなければ料理はできないという点です。つまり、『成長のエピソード(=材料)がある人』でなければ、それを深めていく(=料理する)ことは難しいということです。ただ、推薦入試を1つの受験機会だと考えている人はこの点が欠けています。材料があるからといっても簡単に料理することはできないのです。時間がかかります。つまり、このような話を聞いても「推薦を受けたい」という意思のある人が推薦入試に向いているということです。逆説的ではありますが、(長年指導をしてきた)私自身の経験から確信していることです。

これから受験を考える人にとって厳しい内容を書いてしまったように感じます(すいません)。ただ、私自身が高校受験に携わってきた一人として、受験が「中学生にとって成長するきっかけになってほしい」という願いがあり、本当に重要だと思うことを正直に書いていきました。世の中には(推薦入試であっても)『簡単に合格するためのテクニック』があふれています。仮にそれで合格したとして、次のステージにつながる”何か”が残るでしょうか。残念ながら、そんな簡単な方法はありません。自分を見つめ、自分にとことん向き合い(=葛藤体験)、自分自身と戦わなければ、合格しないという当たり前の事実に気づいてほしいと考えています。確かに(安易な方向に流れてしまう)気持ちはわかります。ただ誰もが不安の中、受験という壁に立ち向かっているということも忘れないでください。がんばれ!受験生。

③小論文/作文の対策

推薦入試の小論文/作文の書き方について

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