都立一般入試の概要
都立高校入試は大別すると「一般(前期/後期)」と「推薦」の2種類に分かれており、(推薦だけでなく)一般入試でも調査書点が加味されるというのがポイントです。一般入試は「学力試験」「調査書点(=内申点)」「英語スピーキングテスト得点(ESAT-J)」の3つで合否が決まります。都立の学力試験は5教科「国語・数学・英語・社会・理科」で、私立は3教科「国語・数学・英語」が多いようです(都立一般入試で小論文を課す高校はエンカレッジスクールのみ)。また、都立は(一般で)受験できるのは1校のみで(基本的に)合格したら入学する前提で受験することになります。ただし都立高校が第一志望でも、私立高校は(「併願優遇制度を利用しない」かつ「受験日が重ならない」場合)複数の学校を受験することができます。だから、模試は何回か(5回くらい)受験しておく必要があり、その結果をもとに私立併願校を「挑戦校」「相応校」「安全校」の順に確保する戦略を立てていくことになります。都立が第1志望でも必ず私立併願校は1つ以上おさえておきましょう。
都立高校の場合は自校作成問題を導入している学校(主に進学指導重点校)があり(10校:日比谷、国立、西、戸山、青山、立川、八王子東、新宿、国分寺、墨田川)、英国数の3科が自校作成問題になります。難易度は非常に高く、学校ごとに出題傾向も異なるというのが特徴です。学校や教科によっても差はありますが、平均点は60点くらいになるように作られています。だから英国数では「いかに部分点を多く取るか」が重要になり、調査書点の比重が自ずと高くなる点にも注意が必要です。
【都立高校一般入試(前期)について】
- 都立一般入試は調査書点(内申点)が加味される
- 英語スピーキングテストの点数も加味される
- 学力試験は国語・数学・英語・社会・理科の5教科が出題される(私立は3教科が多い)
- 自校作成校は、日比谷、国立、西、戸山、青山、立川、八王子東、新宿、国分寺、墨田川で「国語、数学、英語」が自校作成問題となり、社会、理科は共通問題になる(国際高校は英語のみ自校作成)
- 都立受験者も私立高校の併願優遇制度を理解しておく
都立一般入試「学力試験」「調査書点」「スピーキングテスト」の割合
学力試験700点(69%)+調査書点300点(29%)+スピーキングテスト20点(2%)=1020点満点(100%)
【ポイント】
- 学力試験は5教科で実施され、「部分点を少しでも多く取る」ことが重要になる
- 特に記述問題はわからなくても「わかることを整理する」習慣をつけておく
- 学校の定期テストの延長に入試問題があることを理解し、定期テストをおろそかにしない
- 調査書点は実技4教科(保健体育、技術家庭、音楽、美術)のみ2倍して計算する
- 調査書点は中学3年次のみの成績が対象となり、総合点(1020点)の約30%の割合になる。ただし、3年生の成績は、たいていの学校で1,2年次の成績を考慮してつけている
- 「提出物を出す」「授業に参加する(寝ない)」「実技教科のテストも頑張る」など当たり前のことを継続する
- 英語スピーキングテスト得点の割合は、およそ2%(20点/1020点)である
入試で重要なのは「日々の積み重ね」
高校入試となると「難しいことをやらなければいけない」と思ってしまう人は多いと思います。難易度の高い問題集をひらき、自分の力の無さに落胆し「やる気を失ってしまう」というパターンです。しかし、高校入試は(一部の私立上位校や自校作成問題を除いて)教科書の内容から出題されることになっています。「教科書の問題ならできる」という人は多いはずです。ただ、巻末の問題はどうでしょうか? 教科書(数研出版)の「章末問題A/B」「発展」「チャレンジ編」などのページにも目を通しておきましょう。なぜなら、入試問題はこの部分を参考にした融合問題が出題されることが多いからです。また、高校入試は出題される問題の半分以上は3年生の内容です。「三平方の定理」「相似」「円」は入試頻出分野です。学校の授業とは別に早めの対策が必要になります。とはいえ、「(学校の)定期テストの延長線上にしか高校入試はない」ということは覚えておいてください。定期テストが終わったら必ず一度は復習しておきましょう。一部、難しい問題もあるかもしれませんが、それ以外は自力で解けるようにしておきます。それがそのまま入試に直結していくからです。
そして何より、日々の学習を継続することが重要です。当たり前のことですが、この当たり前のことを「積み重ねる」以外に方法はありません。たった0.1でも「昨日より今日が向上していればいい」のです。1に何回1をかけても1に変わりはありません。しかし、1に1.1を100回かけたらいくつになるでしょうか? およそ13,000倍になります。この0.1の積み重ねが、とてつもなく大きな差を生むのです。日々少しずつでも「できること」を地道に積み重ねていきましょう。100日後には13,000倍の力がついているはずです。「継続は力なり」これは精神論ではありません。紛れもない真実であり事実です。では、「どうすれば日々の学習を継続できる」でしょうか。この部分についても科学的なアプローチが必要だと思います。
「1に1.1を2回かけたらいくつになる?」→ 1.4(倍)
「1に1.1を10回かけたらいくつになる?」→ 2.6(倍)
「1に1.1を100回かけたらいくつになる?」→ 13780(倍)
- 計算式はこんな感じです
1×(1×1×1×…×1)=1
1×(1.1)×(1.1)=1×(1.1)2=1×(1.21)=1.21
1×(1.1)×(1.1)×……×(1.1)=1×(1.1)10=2.59
1×(1.1)×(1.1)×…………×(1.1)=1×(1.1)100=13780.6…
日々の学習を継続させるためのヒント
人間は、「やる気」があるから「勉強する」のではなく、「勉強している」過程で「やる気」が出てくるものです。とにかく「作業(勉強)を始めてしまう」ことを意識してください。たった5分でいいので、まずは机に座って問題集を開きます。勉強を始める前に「何も考えてはいけません」。特に、夜は勉強する前に考えごとをするのは止めましょう。人間は誰しも(大人でも)、夜になると不安になるように(脳が)設計されています。これは人間が進化の過程で獲得した生存戦略です。もちろん、私の個人的な意見ではありません。心理学や脳科学で立証されている研究結果です。だから、皆さんも学校の先生に「勉強は朝やりましょう」とアドバイスされたことがあるはずです。これも単なる経験則ではなく、「人間は朝だと悩むことがない」という性質があるからなのです。朝なら思い悩むことがないからすぐ作業に入れます。いったん作業に入ると集中してしまうので勉強がはかどるわけです。繰り返しますが、まずは机に座って問題集を開き、5分間勉強してください。これを毎日繰り返しましょう。
私立校の併願制度について
東京都の高校入試制度は非常に複雑です。都立が第1志望でも「併願校をどのように確保するか」という部分でしっかりと情報収集し、全体像を掴んだ上でスケジューリングする必要があります。特に、私立高校の場合は「東京の私立(→併願優遇)」と「埼玉の私立(→確約)」で使用する言葉が異なります。
・併願と単願について
まず、「併願」とは合格したら入学する権利をおさえて他校(都立高校など)を受験することができる制度です。一方、「単願(第一志望型)」は合格したら必ず入学する制度で1校しか受験できません。都立が第1志望の場合、「併願」で私立のすべり止めを受けるわけです。「併願」受験の場合、成績(調査書点や模試)の基準は「単願」より高くなります。
・東京都の併願優遇には「確約」と「加点」の2種類がある
「加点」は文字通り「当日試験であなたの点数に加点します」ということです。「調査書点(内申点)が〇以上で当日の試験に10点加点」などで、併願優遇を使っても(当日試験で)既定の点数に足りないと合格できません。一方、「確約」とは『合格がほぼ決まる』ということです。学力試験の前に(志望する私立校の)個別相談を通じて「調査書点(内申点)」や「欠席日数等の条件」により『ほぼ合格が決まる』制度です。第1志望の都立高校に合格すれば併願優遇の私立校を辞退して都立校に入学できますが、落ちた場合は併願優遇を利用した私立校に進学することになります。つまり「併願優遇」と「併願確約」どちらも都立校に合格すれば私立校への入学を辞退し、都立高校に入学することができます。しかし、落ちた場合は併願優遇を利用した(または確約した)私立高校に入学することになります。だから、併願優遇で受ける私立は慎重に選ぶ必要があります。また、すべての私立校で「併願優遇および確約」制度を導入しているわけではないので、志望校の情報をしっかり調べておくことも重要です。
・併願優遇には入学金を待ってくれる学校も
そして、併願優遇には「入学金納入を待ってくれる」という学校もあります。都立校の合否が出るまで手続きを待ってくれるので、都立校に合格した場合は入学金などを納入しなくてもよい場合があります。ただし、延納手続きが必要な場合もあるので事前に確認しておいてください。
・(東京都の)私立高校「併願優遇」制度について
【併願優遇…確約型】
- 都立1校の併願は認められるが(都立に合格したらその私立を辞退できる)、ただし不合格ならその私立校に入学しなければいけない
- 私立高校が設定している「調査書点の基準(欠席等も)」または「模試の結果」をクリアし、その私立校の個別相談会に参加する
- 私立校は1校しか受験できないが、合格ラインは引き下げられ有利に合格できる
- 中学の先生と私立高校の間で、併願優遇を利用することを事前に相談しておく
- 受験する前に、入学金等の手続きの詳細(「入学金納入を待ってくれるか」など)を確認/整理しておく
- 志望する私立校の一般入試を受験する
【併願優遇…加点(下駄はかせ)型】
- 併願は認められるが(都立に合格したら辞退できる)、ただし不合格ならその高校に入学しなければいけない
- 私立高校が設定している「調査書点の基準(欠席等も)」または「模試の結果」をクリアし、その私立校の個別相談会に参加する
- 私立校は1校しか受験できないが、合格ラインは引き下げられ有利に合格できるが、(当日試験で)既定の点数に足りないと不合格になる
- 受験する前に、入学金等の手続きの詳細(「入学金納入を待ってくれるか」など)を確認/整理しておく
- 志望する私立校の一般入試を受験する
都立一般入試のスケジュール
4~6月
4月後半からスタートする進学フェアを利用して私立併願校の情報を収集しておく(進学フェアは事前予約が必須で、予約の開始はすでに始まっている)。中学校の定期テスト年間スケジュールを把握し、学校行事、模試、高校説明会申込等の段取りを決めておく。
*模擬試験[Vもぎなど] について:「申込方法・日程の確認」→「高校説明会,模試,学校のテストなどのスケジューリング→「その都度申込手続き(年間5回くらいは受けた方がよい)」
*受験する私立高校の情報をとっておく → 学校説明会の予約開始時期の把握+説明会日の確認
7~8月
私立/都立の学校公開・見学会・学校説明会等の参加(学校によって時期は様々、要予約も多数)
*私立受験校の“調査書点”の条件(模試結果を加味される場合もある)を「大まかにでも」確認しておく
9月
私立/都立の文化祭等の参加+学校の三者面談(「併願優遇を利用するか」等を担任の先生へ確認・連絡しておく)
*都立入試に関する説明会
・「都立高校入学選抜実施要綱説明会」(ウェブサイト上で実施)実施予定:9月下旬
・「都立高校合同説明会 [→ 事前申込み必要] 」実施予定:10月下旬(日)~11月上旬(日)
10~11月
私立高校個別相談会開始→私立併願校をおさえておく
*都立入試問題説明会(必予約)+学校の三者面談(都立受験校確定)
*自校作成校を受ける場合は「自校作成特化型模試」の受験
12月
私立高校個別相談会(ここで確約等 [併願優遇受験] を確認する面談を実施)
1~2月
一般入試[一次](昨年度)願書受付期間:1/31~2/6 → 本試験の入試日:2/21 → 合格発表:3/1
私立入試(例年)願書受付期間:1月上旬 → 本試験の入試日:1月下旬 → 合格発表:翌日以降