新課程大学入試 数学「統計的な推測」等の扱いと勉強法

入試数学の変更点

2025年(令和7年度入試)から新学習指導要領のもと、大学入試でいくつかの変更点が出ます。(2024年3月時点で)高校2年生から対象となり、数学だけでなく「情報」や「公共」などの新教科・科目が追加されます。数学は志望大の入試に以下の3点が出題範囲に入るか(否か)がポイントです。それに合わせて勉強法を工夫していく必要があります。

  • 数学B「統計的な推測」が入るか
  • 数学A「整数の性質(数学と人間活動)」が入るか
  • 文系生徒を対象として、数学C「ベクトル」(「複素数平面」「2次曲線・媒介・極座標」)の扱い

共通テストの変更点

【旧共通テスト】

  • 数学ⅠA [70分](数Ⅰの全範囲「数と式」「集合と命題」「2次関数」「図形と計量」「データの分析」)数A「場合の数・確率」「平面図形」「整数の性質」の3題から2題選択
  • 数学ⅡB [60分](数Ⅱの全範囲「式と証明」「複素数と方程式」「図形と方程式」「三角関数」「指数・対数」「微分・積分」)数B「平面・空間ベクトル」「数列」の2題選択

【新共通テスト(2025年度)】

〇文系の場合

  • 数学ⅠA [70分](数Ⅰの全範囲「数と式」「集合と命題」「2次関数」「図形と計量」「データの分析」)数A「場合の数・確率」「平面図形」から2題選択
  • 数学ⅡBC [70分に変更](数Ⅱの全範囲「式と証明」「複素数と方程式」「図形と方程式」「三角関数」「指数・対数」「微分・積分」)数B「数列」「統計的な推測」数C「ベクトル」の3題から3題選択

〇理系の場合

  • 数学ⅠA [70分] 文系と同様
  • 数学ⅡBC [70分に変更](数Ⅱの全範囲「式と証明」「複素数と方程式」「図形と方程式」「三角関数」「指数・対数」「微分・積分」)数B「数列」「統計的な推測」、数C「ベクトル」「2次曲線・複素数平面」の4題から3題選択 *理系の場合、大半の生徒が「数列」「ベクトル」「2次曲線・複素数平面」の3題選択が多くなる傾向

つまり、共通テストでは文理の違いで、数学の選択分野に変更が出るわけです。文系の場合は数ⅢCを扱わない分、従来通り「数列」「ベクトル」を選択し、それに加えて「統計的な推測」を選択することになります。文系で共通テスト(数学)を使う生徒にとっては「統計的な推測」を勉強する必要が出ます。問題自体は昨年度の数ⅡBの選択問題の第3問(統計的な推測)が目安になります。難易度・分量も同程度のものとなるので、この問題に対応できるようになれば共通テストは十分です。

理系の場合は数ⅢCが必須になるので、「統計的な推測」を選択せずとも「数列」「ベクトル」「2次曲線・複素数平面(数C)」を選択できるわけです。そこが旧来の共通テストとの大きな違いです。

国公立2次(数学)について

国公立2次でも「統計的な推測」を外す大学が多く、出題範囲としている大学は31%に留まっています(2024/3/1時点)。また、関東の国公立大で出題を明示しているのは東大、群馬大、茨城大(工)のみです。しかし、出題範囲であっても、実際の試験で出題されるかどうかはわからないので、その点にも注意が必要です。

文系の数学と理系の数学の違い

文系の数B/Cは「数列」「ベクトル」は必須で、「統計的な推測」を外す大学が多くなると思われます(2024/3/1時点)。いわゆる難関大でも「統計的な推測」を外している学校が多いからです。一方、文系で出題範囲としているのは東大、慶応大(SFC)となっています。ただし、共通テストで数学を使用する文系生徒は「統計的な推測」まで勉強する必要がありますので、今から対策してください。

理系の数B/Cでも「統計的な推測」を外す大学が多く、東大、慶応(医)は出題範囲とし、東工大や慶応(理工)は「統計的な推測」を外しています。また、東工大は数Aでも「整数の性質」を外しており、数C(全範囲)は従来通り出題範囲となっています。

文理共通して、令和8年度以降はどの大学でも「整数の性質」「統計的な推測」を出題範囲内とする大学は増えるはずなので注視しておく必要がありそうです。

新課程大学入試の“数学”の勉強法

共通テスト数学が必要になるかどうかがポイントです。理系の場合は、基本的に数ⅠAⅡBだけでなく数学ⅢCのすべてが出題範囲となるので、多くの時間を「統計的な推測」に割く必要はなくなります。上記のように数C「2次曲線・複素数平面」が選択できるからです。また、文系で共通テスト数学が必要ない生徒も、従来通りの勉強法で十分だと思います。特に私大文系数学の場合は、「大半の受験生が解ける問題を取りこぼさず」かつ「各大問の部分点を積み重ねる」だけで合格最低点に到達することができるからです。

文系で共通テスト数学が必要になる生徒

『共通テスト特有の文章量の多い問題』に慣れていく必要がありますが、設定条件を説明する文章が長いだけで、問題そのもの(文脈を捨象すれば)はそこまで難しいわけではないということを理解しておいてください。自分の志望校に照らして「数学で何%取ればよいか」を明確にしておくことのほうが重要です。「数ⅡBで90%取る」勉強法と「60~70%取れれば十分である」勉強法は異なるからです。後者の場合、重要ポイントは「標準的な問題をしっかり取ること」と「時間配分」です。正答率の低い問題に答える必要はないからです。まずは、教科書の問題(例題、応用、発展など一通り)を自力で解けるようにしてください(いきなり青チャートなどをやらないように…)。そのあとに共通テスト過去問をやってみて、苦手な部分は市販参考書・問題集で補っていく形がベストだと思います。

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