不登校生徒の自己評価回復ステップ

不登校になった生徒は、学校の中で日々削られてきた「外向きのエネルギー(=自己評価)」が枯渇しています。まずはその現状を理解してあげてください。子どもが不登校になった親御さんの心理的な負担は計り知れません。「勉強に遅れてしまう」という焦りが、子どもに対し「いつまでそんなことしているの」という言葉に出てしまうのもわかります。しかし、エネルギーがゼロになった子どもに「勉強しろ」と言っても動けません。今のままではいけないことは本人もわかっています。

【自己評価回復ステップ】

⓪ストレスを抱えやすい“今の学校”の現状を理解してあげてください

①子どもが自己受容できる環境づくり(安全・安心な居場所)

②親御さんのストレスを軽減する環境づくり

③子どもの充電期間の始まり「自分を認められない葛藤と親への八つ当たり」

④不安定なエネルギー放出期「自己決定と試行錯誤の連続(→表情の変化)」

⑤休みながら前進する慣らし期「自己肯定感(=自己評価)を取り戻す経験の蓄積」

⑥子どもが自ら動き出す安定期

「ありのままの自分を認められる(=自己受容)」安全・安心な居場所が必要

「学校に行くこと」「勉強すること」は、子どもにとってエネルギーを必要とする営みです。この外向きのエネルギーは自己受容できるようになると少しずつ回復していきます。ゼロになったエネルギーを充電し、自己受容できるようになれば外に向かって動き出していくものです。自己受容とは「あるがままの自分を(自分自身で)受け入れる」ということです。心理学者のアブラハム・マズロー(1908-1970)は欲求段階説で、人間の欲求が5段階で構成されることを説明しています。『①生理的欲求 → ②安全・安心の欲求 → ③社会的欲求 → ④承認欲求 → ⑤自己実現欲求』というように、①の欲求が満たされると次の欲求②が出てきます。不登校の子どもは「②安全・安心の欲求」が満たされていない状態です。だから、「友だちに会いたい」「誰かと話をしたい」という社会的欲求が出てきません。この状態では学校に行けないのです。子どもを甘やかしたらダメになると考える親御さんは多いはずです。「家の居心地が良すぎると、なおさら学校に行かなくなるのでは…」と思ってしまいますが、安心してください。人間は安全な欲求が満たさせると、次の社会的な欲求が自然と現れてきます。人との関わりが増え社会的な欲求が満たされると、次は「自分の力を誰かに認めてもらいたい」という承認欲求が現れます。最終的な段階は「自分のあるべき姿に自分自身で近づいていく」という⑤自己実現欲求です。

不登校から外向きのエネルギーを回復していく段階的ステップ

娘さんが不登校になったことをきっかけに、現在は不登校コンサルタントとして活躍されているランさんの著書『子どもが不登校になっちゃった!』を参考に書かせてもらいます。不登校から回復していったプロセスを詳細に記録されており、不登校の子をもつ親御さんに是非読んでほしい一冊です。

≪外向きのエネルギーが回復していく段階的なステップ≫

  • ご家庭の中に安全・安心な居場所をつくり、子ども自身が自己受容(=ありのままの自分を認められる)できるようになるまでじっくりと待ってあげてください。
  • 子どもを何とかしようと思わず、親御さん自身が感情を安定させることに集中してください。子どもが嫌がる場合は無理に学校に行かせない方がよい時期です。スクールカウンセラーや不登校の相談窓口等を活用し、親御さん自身が子どもの不登校を抱え込みすぎない状況をつくることが先決です。
  • 子どもの充電期間の始まり。「学校にも行かずいつまで家にいるの?」という不安が出てきますが、外向きのエネルギーが充電されている証拠だと思って焦らず見守ってください。表情が明るくなったからと言って、無理に学校に行かせても社会的欲求が育っていなければ、また同じ状態に戻ってしまう可能性が高いです。≪かなりの時間がかかると思ってください≫
  • 子どもが「暇だな…」と言い始める時期。エネルギーが溜まってきたということです。「これなら学校に行ける」と思いがちですが、子ども自身の自己決定を優先させてください。「自分から学校に行きたい(=内発的な動機付け)」と言うまでは待ってあげてください。子どもであっても、自分の意志決定なら多少のストレスにも耐えることができるようになるからです。
  • 休みながら少しずつ前進する慣らし期間。一人で出かけることが増えてくる時期です。しかし、何か負荷がかかると気持ちが不安定になり、「学校を休んだり」「遅刻したり」「早退したり」することがあります。「また不登校に逆戻り?」と思ってしまいますが、自己肯定感があれば不安定な自分をコントロールできるようになります。
  • 子どもが自ら動き出す安定期。心理的な負荷がかかっても、友だちに相談したりしながら、身の周りのことを自己解決していくようになります。外での居場所をつくることができるようになり、親を頼ることが減っていきます。ここまで来るのにどれくらいの時間がかかるかは個人差があり「こうすればこうなる」ということはありません。今は人生100年時代です。どんな経験も視方しだいで強みに変えられることを知っていれば、子どもも勇気を出してチャレンジできると思います。

*参考文献:『子どもが不登校になっちゃった!』ラン(不登校コンサルタント),すばる舎,2022

●不登校の子どもが、自分でも「学校に行けない理由がわからない」背景

子どもは外で嫌なことがあると、お母さんに話しをすることで落ち着き、「大丈夫だよ」と言ってもらうことで安心します。それにより外向きのエネルギーが充電され、前に進むことができるようになります。しかし、そのときに話を聞いてもらえる人がいないと、モヤモヤした不安だけが残ります。子どもは大人とちがって、自分の感情を客観視して整理することができません。今という世界に生きている子どもはモヤモヤしている理由がわからないので、自分も知らないうちにストレスを溜めてしまいます。蓄積したストレスは、やがて恐怖心(=視線が怖いなど)となって対人関係を避けるシグナルに変わっていきます。自分自身を守るための防衛機制が働くのです。それが限界値を超えると学校に行けなくなります。しかし、なぜ学校に行けないのか本人もわかりません。心(または脳内)で起こるある種の生理反応なので、本人にも「学校に行けない」理由はわかりません。不登校の子どもが「なぜ学校に行けないのかわからない」と言うのは、そういう理由からです。だから「なんで学校に行けないの?」と不登校の理由を聞いても、子どもの自己評価を下げるだけで、はっきりした理由は出てこないでしょう。行けない理由が毎回変わるのも、ウソを言っている訳ではないということを理解してあげてください。“行けない理由”を聞くことは、子どもを心理的に追い込んでしまうことになるので、まずは見守ってあげましょう。

●不登校の子どもに親御さんがやらない方がよいこと

・毎朝、無理やり起こして学校に行かせようとする

上記のように、朝起きられないのには理由があります。やらなければいけないとわかっているのに、できない自分がいるからです。人間はやりたいという欲求がなければ行動に移せません。「安全・安心の欲求」が満たされていない状態で、社会的な欲求は生まれないのです。学校の先生は「どんな時も欠席の連絡は入れてください」と言いますよね。しかしこれが親御さんにとって一番のストレスです。

担任には次のように話してください。

『うちの子どもは適応障害が出始めていますので、しばらく休むことになりますが、教育支援センターなど地域との連携はとっています。行けるようになったら連絡しますので、よろしくお願いいたします』

・ゲームやYouTubeを取り上げる

親の権力でスマホやゲームを止めさせようとしても「キレる」「引きこもる」「隠れてやる」など、ますます親子関係が悪化してしまうことがあります。将来どうなるか不安なのは子どもも同じです。しかし、不安で何も手につかないのです。そのような抱えきれない不安とストレスを発散させてくれるのが、ゲームやYouTubeです。唯一、現実を忘れることができ、自分を保つことができる時間です。まずは親御さんが「親に言えない子どもの気持ち」をわかってあげることが必要かと思います。簡単なことではありませんが、「親に自分の気持ちをわかってもらえた」という心のやり取りができたあとに、子ども自身にゲームやスマホのルールを考えてもらうというのはどうでしょうか。最初は、親が満足できるルールではないかもしれませんが、子どもの提案は丁寧に受け止めてあげてください。「安全・安心の欲求」が満たされ、精神的に安定してくると、子どもは自ら自分をコントロールできるようになっていきます。

・子どもの友達の力を借りて学校に行かせようとする

友達に迎えに来てもらうというのは、子どもに劣等感を与えてしまいかねません。「友達が来てくれているのに…」というプレッシャーが重荷になってしまうこともあります。とにかく無理に学校に行かせるのは避けた方がよいと思います。

自己受容から自己評価(=自己肯定感)を高めていくプロセス

自己受容は「ありのままの自分を受け入れること」であり、自己評価(=自己肯定感)は「ありのままの自分を認めた上で、『自分にも何かできる』と実感できる“根拠のない”感覚」です。ありのままの自分を受け入れることができなければ、『何かできるはず』という感覚は育たないと思います。自己評価(=自己肯定感)を高めるためには2つのポイントがあると思います。『1.自分が必要とされていると実感できる経験』と『2.自分で何かを決めた(=自己決定)経験』です。

1.自分が必要とされていると実感できる経験

大げさなことではなく小さなことで構いません。「安全・安心の欲求」が満たされてくると精神的な余裕が生まれ、少しずつ言動・行動が安定していきます。「食べたお皿を自分で洗う」「洗濯物をたたむ」「お風呂を掃除する」「掃除機をかける」など、子どもができそうなことを手伝ってもらいましょう。無理にさせる必要はありません。そのときに『ほめる』のではなく『〇〇(子どもの名前)が手伝ってくれるから、お母さん助かる!』と認める声かけをしてください。心理学者のアドラーは『ほめることは相手の自律心を阻害し、ほめられることに依存してしまう』と指摘しています。『ほめること』と『認めること』のちがいは、結果や能力を評価することが『ほめる』ことで、結果に関係なく存在を受けとめることが『認める(=承認)』ということです。子どもだけでなく大人でも、承認されることで「私は私で良いんだ」という気持ちが、他者の評価を気にせず「自分の生きたい人生を生きる」ことに意識が向かっていくものです。

2.自分で何かを決める(=自己決定)経験

人間の幸福度を高める要素は「自己決定」「人間関係」「健康」の三要素が最も大きく、所得や学歴は長い人生でそれほど大きな影響力をもちません。これは主観的なことではなく、心理学や経済学*でも立証されていることです。ゲームやYouTubeは親御さんの悩み事の1つです。何時間もゲームをする姿を見ていると、誰でも子どもの将来が不安になってきます。上にも書いたように、無理に止めさせようとしても「キレる」だけですが、精神的に安定してきたと感じたら「親御さんが感じていること」を率直に伝えてもよいのではないかと感じています。

*参考:「幸福感と自己決定-日本における実証研究-,西村和雄,八木匡,2020」

『〇〇(子どもの名前)が不登校になってお母さんも不安だったけど、〇〇(子どもの名前)も同じように不安だったんだよね。今の学校は勉強だけじゃなく、人間関係も複雑みたいだからお母さんが子どもだったとき以上に、ストレスを感じてしまうのかもしれないね。でも、毎日のようにゲームやYouTubeをやっている姿を見ていると、正直なところお母さんも心配になってくるの。〇〇にはどんな仕事でもいいから、何かやりがいを見つけ充実感を感じながら大人になっていってほしい。お金を稼ぐことは大切だけど、仮に失業しても支出を減らせば生きていけるんだから大丈夫よ。ゲームが楽しいのもわかるし、お母さんだってYouTubeを見るんだけど、これからはルールを決めていくことも大切だと思うんだ。〇〇はどう思う?(子どもの話を真摯に受けとめてあげてください)』

最初は、親が満足できるルールではないかもしれません。ただ、子どもの提案は丁寧に受け止めてあげてください。精神的に安定してくると、子どもは自ら自分をコントロールできるようになっていきます。子どもであっても、自分の意志決定なら多少のストレスにも耐えることができるようになるからです。親御さんの気持ちは必ず子どもに伝わります。ゲームやスマホ漬けの毎日は子どもにとっても楽しいものではないのです。だからこそ、自己決定により少しずつ自分を律する成功体験が積み重なっていくと、自己肯定感も高まっていきます。

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