不登校生徒が増加する背景

・学校全体に蔓延する多忙感

「行政から学校に降ってくる仕事の多さ」=「仕事は増えても減ることはない」という現実

→「先生の多忙感・焦燥感が子ども達に伝搬している現場」

→「子どもの多様性を認めるには先生達にも精神的な余裕が必要」

→「学校の評価軸の少なさと情報洪水の板挟みで価値観の多様性が阻害される」

→「“認められない”という不安と本人も気づかない攻撃性(=防衛機制)の悪循環」

→「互いに自己評価を下げ合う圧力(=同調圧力)が働く学校」

→「学校を避ける生徒が増加するもう1つの背景~高学力を活かせていない日本の学校教育~」

●学校に蔓延する多忙感→精神的に余裕のない先生と生徒たち

私は都立高校の教員でした。都立高校に勤める前は私立高校でも教員をしていました。合計で20年の教員経験がありますが、今の学校の現状は私たち親世代とは根本的に異なる部分があります。学校全体に多忙感が蔓延しており、先生も生徒も精神的な余裕がなくなっているのです。私自身は高校で教えることがメインでしたが、小中学校の現状はさらに過酷なものになっています。「国際教員指導環境調査(2018年)」で、日本の小中学校教員の仕事時間(1週間)は平均の1.3倍で、過労死ライン(月80時間)の教員が中学校37%、小学校14%となっています。その理由は、行政から学校に降ってくる仕事の多さです。(学校の)仕事は増えることがあっても減ることはありません。それが学校全体に蔓延している多忙感の原因です。

●評価軸の少なさが子どもを苦しめている現状

学校は子どもの人格形成に資する様々な要素を考慮するからこそ、「やったほうが良い」ことは無限に出てきます。しかし、新たに何かを導入するには時間もコストもかかります。今までやってきたことを減らし、優先順位の高いことにリソースを割く必要があります。しかし、学校という組織は新しいことを導入しても、今までの仕事が減りません。何かを減らすには、誰かの意思決定が必要になるからだと思います。だから先生方は疲弊し、その多忙感・焦燥感が子ども達に伝搬しています。今も昔も学校にはいろんな子ども達がいます。子どもの多様性を認めるには、先生達にも精神的な余裕が必要です。それが今の学校にはありません。正確には、昔からその責任を一人ひとりの教員に押し付けてしまった制度的な弱点があるのだと思います。勉強、部活、学校行事、宿題、塾、習い事、友達との時間、将来の進路など、いろんなことに葛藤しながら多忙な日々を過ごしています。子ども達にも精神的な余裕がなくなっているのだと思います。そこに、学校がもつ“評価軸の少なさ”という課題が追い打ちをかけています。今の学校は「勉強ができること」と「部活で活躍すること」の2軸しかありません。

●学校での勉強と部活、子どもの自己評価の低さ

私(40代男性)が高校生だった頃は、子ども達の中にもいろんな評価軸がありました。今のようにSNSやインターネットの世界がなく、リアルな世界しかありませんでした。情報が少なかったからこそ、多様な評価軸を維持できたのだと思います。しかし、今は違います。望むと望まざるとに関わらず、日々洪水のような情報が流れてきます。問題なのは、子どもが触れている情報の多くが「勉強ができること」を過剰に煽っている点です。だから「勉強ができる」ことに対して、異常なほどのコンプレックスをもっています。私自身は『勉強が得意な生徒が多い学校』から『そうでない生徒が多い学校』まで、様々な所で教員をしてきました。ただ、難易度によらず“学校のもつ空気感”は変わりません。「勉強」と「部活」の2軸が大勢を占めているのです。だから、そのどちらか(または両方)をもっている生徒の自己効力感は高く、学校生活が充実しています。外向きのエネルギーに満ちているから学校行事にも積極的です。だから、今の子どもたちは二極化(外向きのエネルギーの二極化)してしまうのではないかと感じています。事実、教育評論家の藤原和博氏は自著の中で「学校の中で、勉強が“できる子”と“できない子”が二極化しており一斉授業が機能していない」と指摘しています。

●学校に蔓延する防衛機制としての“マウンティング”

自我が芽生える中高生にとって、(今は)勉強と部活の2軸が自己評価を形成しています。そのどちらもない生徒にとっては、“認められない”不安が常につきまといます。だから、子ども達は本人も気づかないうちに、友人やクラスメイトに対し“攻撃的な防衛機制”が働いてしまうのではないかと思います。防衛機制とは、危機に直面したとき不安を弱めるために無意識に働く心理メカニズムです。最近よく耳にする“マウンティング”というのは、まさに防衛機制の最たるものです。学校は成績評価システム上、多くの“認められない”生徒を生み出します。だから学校の中では絶えずこの“マウンティング”が蔓延しています。生徒間で「俺は(私は)おまえを認めない」という負のメッセージが教室を飛び交っているのです。SNS上では、より深刻な「認めない」という“負のメッセージ”が仮想空間を汚染しています。加えて指摘しておくべきは、不登校が誰にでも起こりえるという点です。結果的に、学校には互いに自己評価を下げ合う圧力(=同調圧力)が働く場所になってしまいました。学校に行くことが子どもの自己評価を下げる主要因になりえるのです。これが、私から視た“今の学校”の困難さです。不登校生徒が急増している理由が理解してもらえたでしょうか。

●高学力を活かせていない日本の学校教育

日本の学校の課題や問題点を書いてきましたが、もちろん悪い部分だけではありません。2022年に実施した国際学力調査(PISA)で、日本はOECD加盟国中で数学1位,科学リテラシー1位,読解力2位という結果(対象年齢:15歳)を出しました。日本の子どもの学力の高さは、やはり学校教育によるところが大きいはずです。ただし、この調査でわかっていることは『日本の子どもは高学力だが、学習に向かう意欲は高くなく、自己評価が著しく低い』という点です。例えば、「困難な状況で解決策を考えられる」という質問に対する肯定割合は最下位の59%(平均84%)であり、「自律学習と自己効力感」に関する質問の肯定割合はワースト4位でした。また、日本は国際的な学力水準はトップだが、経済指標としての労働生産性は30位と奮いません。教育学者の舞田敏彦氏は「日本は高学力を活かせていない国」と評しています。子ども達は“言われたこと”を頑張ってこなしていますが、その努力が(経済的な豊かさなど)今後の生活につながっていないという問題があるわけです。これも子どもたちが学校(教育)から離れてしまっている理由の1つだと思います。

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